認知症高齢者の心理①
混乱と焦燥感
認知機能が低下すると、本人が理解した状況と現実が異なるという事態に直面します。
例えば、家に向かって歩いているつもり(実際は逆方向に歩いているとしても)なのに、どんなに歩いても家に辿り着けないといった状況を想像すると、混乱して、どうしたら良いかわからなくなってしまうのではないでしょうか。
あるいは大切な物(例えば、財布や預金通帳、家のカギ等)を探しているのに、どんなに探しても見つからない場合には、焦り(焦燥感)を感じるのではないでしょうか。
現実の状況認知に困難をきたしている認知症高齢者は、常にこのような混乱や焦燥感を感じやすい状況にあると考えられます。
不安感とストレス
混乱や焦燥感が継続すると、不安感につながります。朝起きてみると、自分は自宅にいたつもりなのに、全く知らない場所だったとしたら、そして知らない人たちが繰り返し親しげに話しかけてきたら(実際は自宅であったり、家族であったりするのですが)、最初はわけがわからなくなって混乱し、その後、とても不安な気持ちになるでしょう。このような不安感の継続は、大きなストレスにつながっていく可能性があります。
孤独感・不快感・被害感
自分自身が認知した状況と、現実に自分が置かれている状況が異なるという状況が続き、混乱や焦燥感、不安感やストレスを感じ続けていると、自分が周囲の人と異なっているという気持ちに陥ります。
自分は全く知らない場所にいると思っているのに、周囲の人がそのことを否定し、「ここがあなたの家でしょ」というような反応をとり続けると、周囲の人たちのことが信じられなくなると同時に、孤独感を感じるようになることが推測できます。
さらに、周囲の人たちが自分をだまそうとしているというような被害感や不快感を持ってしまうこともあるかもしれません。
あるいは本人は家に帰ろうとしているにも関わらず、周囲の人が言葉や行動で止めさせようとしたら、とても不快な気持になり、家に帰らせてくれないという被害感につながると考えられます。
自分のほうが間違っているかもしれないと思っている場合でも、周囲の人が頭ごなしに否定したり、強圧的に指示したりというような接し方をすると、孤独感や不快感、被害感を感じるようになっていくと考えられます。
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